ラストワンマイル

ラストワンマイル(Last One Mile)とは、物流業界において、最終配送拠点からエンドユーザー(顧客)のもとへ荷物を届ける最後の区間を指す用語です。この「1マイル」は物理的な距離そのものよりも、物流プロセスにおける「最後の接点(ラストタッチポイント)」を意味し、顧客体験(CX)を左右する最も重要なフェーズと位置づけられています。
物流業界において、このラストワンマイルは「最もコストがかかり、最も非効率になりやすい」工程として知られています。長距離輸送(幹線輸送)は大型トラックや鉄道、船舶などで一度に大量の荷物を拠点間輸送するため、スケールメリットが効きやすく、システム化も進んでいます。しかし、ラストワンマイルは個々の住宅やオフィスへ、サイズも形状も異なる小口の荷物を一つひとつ届ける必要があり、配送先が細かく分散しているため、積載効率を高めることが難しく、どうしても多くの人手と時間がかかります。
近年、EC(電子商取引)の急激な拡大により、宅配便の取扱個数は爆発的に増加しています。国土交通省のデータによれば、宅配便取扱個数は年間50億個に迫る勢いです。これにより、ラストワンマイル配送を担うドライバーの負担は限界に達しつつあります。特に、受取人不在による「再配達」の問題は深刻で、全宅配物の約11%〜15%が再配達となっており、ドライバーの労働時間の約1割~2割がこの非生産的な業務に費やされていると言われています。これは単なる労働力の浪費だけでなく、トラック走行距離の無駄によるCO2排出量の増加(年間約25.4万トンCO2)という環境問題にも直結しており、SDGsの観点からも解決が急がれています。
こうした課題を解決するために、官民一体となって様々な取り組みが行われています。消費者側へのアプローチとしては、確実に受け取れる「宅配ボックス」や「置き配」の普及、コンビニ受取やPUDOステーションなどの多様な受取方法の提供が進んでいます。物流事業者側では、AI(人工知能)を活用した「配送ルートの最適化システム」や、スマートフォンアプリによる配送効率化が導入されています。そして、次世代の解決策として最も期待されているのが「テクノロジーの活用」です。特に「ドローン配送」や「自動配送ロボット」の実用化は、人手を介さない配送手段として革命的なインパクトを持っています。レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)の解禁により、ドローンが都市部の空を飛び、ロボットが歩道を走って荷物を届ける未来が現実になりつつあります。ラストワンマイルは今、単なる運送の末端ではなく、物流DX、MaaS、スマートシティ構想が交差する、イノベーションの最前線となっているのです。