ニュースの概要
Galaxy 1とViasatは、Viasatの衛星通信基盤「Velaris」について、次世代の航空機で使えるかどうかを検証したと発表した。対象は、空飛ぶタクシーと呼ばれるeVTOL、自律で動く配送機、医療物資の輸送機、緊急対応や設備点検に使う機体などである。Lバンドという周波数帯の衛星回線を使い、携帯電話の電波が届かない場所でも機体と地上をつなぐ狙いがある。配送ドローンでは、飛行中の位置や状態の監視、運航の管理、遠隔からの操作、トラブル時の対応までを一本の回線で支える構想だ。今回の検証は、運用面と商用面の両方で見通しを得る作業だったという。通信が弱点だった無人配送を、規模拡大の段階へ進める動きといえる。
引用元: ViasatとGalaxy 1、無人配送航空機向け衛星通信サービスを検証(Ground News)
分析・見解
携帯網が届かない空域こそ、物流ドローンの採算地帯
配送ドローンが本当に必要とされる場所は、山間部、離島、河川の向こう側など、人手の配送が割に合わない地域である。ところがそうした場所は、携帯電話の基地局が薄い。地上の通信網は高度100メートル前後を飛ぶ機体には想定外の使い方で、電波がまばらにしか届かない。結果として、需要が大きい場所ほど通信が不安定という矛盾が生じてきた。
衛星通信はこの穴を埋める。地形に左右されず、飛行ルートの全域で同じ品質の回線を確保しやすい。今回のVelarisは、まさにこの穴をねらった商品である。
Lバンドが選ばれる理由は、雨と揺れに強いこと
衛星通信には複数の周波数帯がある。高速通信向けのKuバンドやKaバンドは大容量だが、大雨で弱まりやすく、大きなアンテナも要る。これに対してLバンドは、通信速度こそ控えめでも、天候に強く、小さなアンテナで済む。
航空機に必要なのは動画ではない。位置、速度、電池残量、異常通知、操縦指令といった小さなデータを、途切れず確実に届けることだ。重量に厳しい小型機にとって、アンテナが軽くて小さいことも大きな利点になる。ここでLバンドが理にかなう。
たとえば海上では、船舶の安全通信にLバンド衛星が長年使われてきた。命に関わる通信は速さより確実さを優先する、という考え方が空にも広がってきたといえる。
規制の流れが、通信の二重化を後押しする
日本のレベル4飛行(=有人地帯の上空を、操縦者が機体を見ないまま飛ばす形態)では、通信が切れたときの対処が厳しく問われる。米国の目視外飛行の許可でも、制御用の回線が失われた場合の手順が審査の中心になる。
一つの回線に頼る設計は、審査で不利になりやすい。携帯網と衛星を組み合わせ、片方が切れてももう一方で機体を呼び戻せる構成は、安全の説明材料として強い。通信が単なる便利機能ではなく、飛行許可を取るための部品に変わりつつある点が見逃せない。
検証の次は、料金と機体への搭載が壁になる
今回の発表は検証の結果であり、広い商用運用はこれからである。課題は二つある。一つは月額の通信費だ。1回数百円の配送を成立させるには、機体1台あたりの通信費を極めて低く抑える必要がある。もう一つは、機体メーカーが衛星端末を標準で積むかどうかである。端末は数百グラムでも、小型機では積載量を直接削る。
それでも、空飛ぶタクシーや医療搬送のように単価の高い用途から先に採用が進み、そこで量産効果が出れば、配送機にも波及する。この順番で広がるとみるのが現実的だろう。
ビジネスへの影響
通信費を運航計画の固定費として組み込む
ドローン事業者は、通信を最初から「携帯網だけ」と決め打ちしない方がよい。山間部や離島を含む路線を検討するなら、衛星回線の費用を見積もりに入れておく必要がある。1便あたりの通信費、端末の重さ、搭載による飛行距離の短縮を、比較表にして検討したい。
特に医療物資や災害対応のように、届かないことの損失が大きい用途では、通信の途切れにくさが料金に見合う価値になる。逆に都市部の軽い荷物では、携帯網のみで十分な場面も多い。路線ごとに使い分ける発想が、費用を抑える近道である。
保険会社や自治体への説明材料として使う
通信を二重にしておくことは、保険料の交渉や自治体との協定で説明しやすい材料になる。万一回線が切れても機体を管理下に置けるという根拠があれば、リスク評価が下がる可能性がある。
実務では、まず自社の飛行ルートごとに携帯の電波が弱い区間を地図で洗い出すことから始めるとよい。そのうえで衛星回線の導入が必要な区間を絞り込めば、過剰な投資を避けながら、安全面の説明も強化できる。通信事業者や機体メーカーとの早めの情報交換が、導入時期を左右する。