ニュースの概要
MITテクノロジーレビューは、配送ドローンの増加に伴って生まれる新しい仕事として、空の交通整理を担う「航空管制官」を取り上げた。これまでドローンは一機に一人の操縦者が付くのが普通だったが、配送の事業化が進めば、多数の機体が低空を行き交うことになる。その混雑をどう整理し、安全を保つのかという問いが、人の仕事として具体化し始めている。旅客機の管制とは違う、低空ならではの難しさもある。鍵になるのは、機械に任せる部分と人が責任を持つ部分の線引きである。本稿では、この職種が何を担い、自動化とどう役割を分けるのかを、制度や日本の事情と合わせて考える。
引用元: 未来の職種:増加する配送ドローンを交通整理する「航空管制官」(MITテクノロジーレビュー)
分析・見解
機体が増えるほど、人が見張る仕事は形を変えて残る
配送ドローンは、一機ごとに操縦者が付く段階を過ぎつつある。米国ではWingやZiplineが配送網を広げ、Wingは小売大手ウォルマートと組んで対象店舗の拡大計画を発表している。一人の担当者が複数の機体を同時に見守る運用は、すでに現実の話になってきた。
機体が増えると、衝突を避ける判断だけでは足りなくなる。急な天候の変化、着陸地点の混雑、通信の途切れといった小さな例外が、数に比例して増えるからだ。こうした例外をさばく役が、記事の言う「空の交通整理役」にあたる。
旅客機の管制と違い、混み具合の調整が中心になる
旅客機の管制は、決まった航路と無線の交信で成り立つ。一方、低空を飛ぶドローンは、住宅地や電線、鳥、突風のなかを進む。しかも注文は時間帯に偏る。昼食時や夕方には、同じ地域に機体が集まる。
そのため仕事は、一機ずつ指示を出すより、空域の混み具合を見て出発を遅らせたり、経路を割り振ったりする運営役に近い。衝突回避そのものはUTM(=無人機の交通管理システム)が自動で行い、人は機械が判断に迷った場面を引き受ける。ここに独自の価値がある。「飛ばさない判断」を早く下せる人ほど、現場の事故と遅延を減らせるからだ。
自動化が進んでも、責任を負う人は消えない
自動化が進めば人は要らなくなる、という見方は単純すぎる。旅客機の自動操縦が普及しても、パイロットと管制官は残った。理由は責任の所在にある。事故が起きたとき、状況を把握し、止める権限を持っていた人が誰なのかを説明できなければ、社会は運航を認めない。
規制の側も同じ方向に動いている。米国の目視外飛行の規則案(Part 108)や日本のレベル4(=有人地帯での目視外飛行)の制度は、機体の性能だけでなく運航体制も審査の対象にする。管制役は、技術と社会の信頼をつなぐ接点だ。
日本では人手不足を補う新しい職として根づくか
日本のレベル4は2022年12月に解禁されたが、定期配送は山間部や離島が中心で、都市部での大量運航はこれからだ。離島では、天候で欠航しやすい船便の代わりとしても期待される。ただ、物流の人手不足は深刻である。一人で複数機を見られる運航管理者がいれば、配送一件あたりの人件費を大きく下げられる。
課題は養成だ。操縦者の資格制度はあっても、複数機を同時に見守る役割の訓練は標準化されていない。ここが整えば、元パイロットや運行管理者、工場や施設の監視員など、異分野からの転職先にもなり得る。複数の画面を同時に見る力は、ほかの仕事で磨いた経験が生きるだろう。
ビジネスへの影響
運航管理の体制を、機体の購入前に設計しておく
配送ドローンを導入する企業は、機体の性能比較に目が向きがちだ。しかし本当に費用と時間がかかるのは、運航の見守り体制である。一人が何機まで見られるか、例外が起きたとき誰が判断するか、夜間や悪天候の基準は何か。これらを先に決めておくと、実証から本格運用への移行が速い。
委託先を選ぶ際も、機体の数より、運航管理者の人数と交代制の有無を確認したい。自治体や地域住民への説明でも、体制図があると信頼を得やすい。
人材は新規採用より、社内の経験者から育てる
運航管理者の候補は、すでに社内にいる場合が多い。配車係、倉庫の出荷管理、コールセンターの監督者などは、複数の動きを同時に見て優先順位をつける訓練を積んでいる。そこにドローンの法規と気象の知識を足すほうが、ゼロから採用するより現実的だ。
国の資格や民間の講習を組み合わせ、半年程度の育成計画を立てるとよい。資格取得の費用を会社が負担すれば、定着率の向上にもつながる。
一人あたりの担当機数を指標にして採算を見る
採算を測る数字として、「運航管理者一人あたりの同時担当機数」と「一件あたりの例外対応時間」を追うことを勧める。担当機数が増えても例外対応が急増するなら、自動化の水準が足りない証拠だ。逆に例外が減っていれば、人員を増やさず配送量を伸ばせる。
投資判断では、機体の台数よりこの二つの数字のほうが、事業の伸びしろをよく表す。保険会社や自治体との協議でも、説明の材料として使える。