ラストマイル物流は、消費者の手元に荷物が届く最終工程を指します。EC市場の拡大に伴い配送量が急増する一方、この工程はCO2排出量や労働負荷の面でSDGs達成の大きな課題となっています。本記事では、業界が取り組むEV化と再配達削減という二つの主要施策を中心に解説します。
ラストマイル物流とSDGsの関係
SDGs(持続可能な開発目標)のうち、ラストマイル物流と特に関連が深いのは「目標13:気候変動への対策」と「目標8:働きがいも経済成長も」です。配送車両が排出するCO2は都市部の大気汚染や温暖化に直結し、慢性的な長時間労働は労働者の健康と安全を脅かします。この二つの課題を同時に解決することが、持続可能な物流システムの構築に欠かせません。
配送車両のEV化が進む背景
国内の大手宅配事業者は、ガソリン車からEV(電気自動車)トラック・バンへの切り替えを積極的に進めています。EV化により走行中のCO2排出量をゼロにできるほか、電力調達を再生可能エネルギーに切り替えることで、サプライチェーン全体の排出削減につなげることが可能です。環境省は企業に対してサプライチェーン排出量(Scope 3)の算定と削減を求めており、物流部門の脱炭素化は多くの荷主企業にとっても重要な経営課題となっています(参照:環境省「サプライチェーン排出量の算定・削減」)。
再配達問題の削減と環境への貢献
国土交通省の調査によると、宅配便の再配達率は約10〜15%程度で推移しており、これに伴う無駄な燃料消費と排出ガスが問題視されています。置き配の普及、宅配ボックスの設置拡大、受取日時のオンライン変更といった施策が組み合わされることで、再配達件数は確実に減少しつつあります。再配達を1回減らすことはドライバーの労働時間削減にも直結し、「働きがい」の向上という観点からも意義があります(参照:国土交通省「物流・宅配サービスの改善」)。
消費者の行動変容が物流を変える
物流のグリーン化は事業者の取り組みだけでは達成できません。消費者が置き配サービスを積極的に利用したり、配達日時を正確に指定したりする行動が、全体の効率を高めます。また、まとめ買いや配送頻度の見直しによってトリップ数を減らすことも、CO2排出量の抑制に貢献します。個々の選択が積み重なることで、業界全体の持続可能性が向上します。
物流グリーン化に向けた政策と今後の展望
国土交通省は「グリーン物流パートナーシップ会議」を通じて、荷主と物流事業者が連携して省エネ・低炭素化を推進する枠組みを整備しています。AI技術による配送ルート最適化や積載率向上も、燃料消費削減に有効な手段として普及が加速しています。EV化、再配達削減、AI活用の三つが連携することで、ラストマイル物流のサステナビリティは一段と高まると期待されます。